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特集「モバイル・ソーシャル」アプリビジネスの特質と参入戦略(第3回)(2010/10/26)
いったん上記のメカニズムで、一定のテーマ性とストーリー性を持った渦が形成されると、ネットワークの外部性により渦が新たなメンバーを巻き込み、話題が奔流のように拡散していく。Facebookや Twitterにおいては、ShareやLike(Facebook)、Retweet(Twitter)等の情報共有機能が有効に機能する。

(2)ソーシャルサービスの情報価値生成・流通プロセス②

ネットワーク外部性と「渦」の自然増殖・高速伝播

それにより、話題が人間関係を通じて紹介され、話題を紹介した側は話題を自分の友人・知人に伝えることができた満足感を得る。また、紹介された側が興味を持ってその場に加わることで、短時間のうちに相乗的にコミュニケーション・インタラクションが広がっていく。

モバゲーやグリーにおいても、人気ゲームにおいては、初期メンバーによるアクティビティが活性化し、ある臨界点に達した段階で、ゲームへの招待数が、メンバーの母数とバイラル率(紹介率)の積算で一気に増加し、それによりソーシャルゲームの利用がいっそう活発化するという、ネットワークの外部性が機能するポイントが存在すると言われる。

モバゲーやGREEの巧みなところは、こうしたユーザーの流れを見極め、臨界点に達したタイミングで広告宣伝やイベントを集中投下し、自然増殖スピードを更に促進、垂直的にサービスを収益化するノウハウにある。また自然増殖的に拡散・増幅された情報は、メンバーのライフログ・ソーシャルグラフとして蓄積され、次の情報流通の基礎の一部となっていく。

非ネット媒体・Web1.0媒体との違い-創作と流通が混然一体に

非ネット媒体において、コンテンツは「パッケージ」されたもの、すなわちコンテンツの内容・構成が固まった形でユーザーに提供され、ユーザーは文字通りそれを「利用」する受身の立場にある。ポータルサイトに代表されるWeb1.0媒体も基本的には同様の特徴を備える。

ところが、ソーシャルサービスにおいては、メンバー達も情報価値の生成・増幅に主体的に参画し、それによってコンテンツの内容・構成が決まることになる。すなわち、コンテンツの世界にこれまで厳然と存在したクリエイターによる「制作」とパブリッシャーがユーザーに働きかける「流通」の壁は曖昧であり、両者が混在した「掛け合い」を通じ、コンテンツが生成されているのである。

したがってソーシャルサービスにおいては、サービスリリース前の作り込み(狭義の制作)段階における世界観や、キャラクターデザインにおける創造性だけでは、ヒット作は決まりにくい。代わりにコンテンツをリリース後、ユーザーの反応を分析・検証するPDCAサイクルにより、アイテムや機能の改善・改良を図ることで、ユーザーニーズを掘り当てる運用との一体性、さらには掘り当てたユーザーニーズをいっそう刺激するプロモーションとの一体性が制作側に求められることになる。

その結果、作家やアーティストが絶対的な創造主や権威として振舞うことは難しくなる。創作力はさほどないが、科学的な分析力とそれに基づく対応力に優れ、頭と手の回転の速い人物(もしくはチーム)が代わりに求められることになりやすい。ソーシャルサービスに嫌悪感を示すコメントが、芸術家からしばしば聞かれるのも、この「制作」側の支配力の弱さを考えれば理解できるところである。

Web.2.0ネット媒体との違い-放送との近似

では、これまでのWeb2.0ネット媒体上の情報流通とSNS上の情報流通との違いは何だろうか。
まず検索によるナビゲーションとの違いを考えてみよう。検索に基づく情報アクセスは、基本的にユーザーの能動的行動によって初めて成立する。従って、情報収集への積極性や検索能力の高さ次第でユーザーの受け取る情報への量・質は大きく変わり、関心のある情報だけが絞り込まれてユーザーに供給される傾向がある。

ところがSNSにおいては、コミュニティ内で他人のライフログ・ソーシャルグラフがさほど選別されずに流通され、特に話題のテーマは短時間のうちに広く伝播される傾向があるため、検索による情報アクセスに比べれば、一方通行の形で情報が目に飛び込みやすい。また、顔見知りのメンバーから情報が送られた場合には、付き合い上「見ざるを得ない」という強制力もある程度は働く。

更には、他のメンバーから自身の個性や関心が認知された場合には、自ら能動的に検索することがなくとも、関連のありそうな情報や興味を持ちそうな情報を紹介してもらえるケースがある。こうした即時性と一方通行性、すなわち放送に似た特徴があるのが、SNS上の情報流通の特長である。

一方、掲示板やブログ等、これまでのCGMとの差はどうだろうか。SNS上のソーシャルサービスでは、過去からの活動の継続性やその質がサービスを利用する際の資産として機能し、そうした資産(ステータス)を築いたメンバーが影響力を有する点が差としてあげられる。

メンバーのライフログ・ソーシャルグラフが整理され一覧性を持ってアクセスでき、メンバーの顔が見えやすいことから、過去からコミュニティに継続的に参加・貢献を行ってきたメンバーは他のメンバーからそれを認知され尊重されやすく、またこうしたコアなメンバーは他のメンバーへの影響力を考えた発言・行動を行う傾向がある。

一方で、参加率が低かったり、不正や誹謗・中傷を繰り返したりするような、コミュニティに消極的もしくはネガティブな影響を与えるメンバーはコミュニティの中心から外される傾向がある(SNS事業者によって強制退会される場合もある)。

こうした自律作用が、ノンIDもしくはID管理の構造の弱い既存のCGMよりは働きやすく、結果として影響力のあるメンバーの伝える情報が、短時間のうちに一方通行性を持って流通する点が、従来型のWeb2.0ネット媒体と比較したSNSの特色と言える。

ライフログ・ソーシャルグラフの「資産価値」が中毒性を形成

ここで確認したいのは、単発のフロー情報に過ぎないように思われたライフログ・ソーシャルグラフが、実は集合(ストック)として、ソーシャルサービスにおける「渦」(話題)の形成・拡大に寄与している点である。

例えば、津田氏とTwitterデビュー直後の一般人が同じ発言をツイートしたとしても、前者はそれが話題のきっかけになり、後者は単なるフローに終わることは、ままあるだろう。それは、津田氏の過去からの発言やソーシャルグラフがメンバーの間で共有されてきたことにより、津田氏の嗜好・思想や人間関係、サービス内でのステータスがメンバーの中に共通認識として確立されており、それが様々なフロー情報をより合わせ、渦を形成するための粘性として機能しているからである。

このように、メンバー間の顔が見える形のコミュニケーションが行われることで、ライフログやソーシャルグラフは資産効果を生む。

特にソーシャルゲームでは、こうした資産効果が事業者からのプログラムによって増幅・演出されている。「戦闘力」や「経験値」、友達との協力の際の「連携ポイント」といった各種の設定は、メンバーの過去からの継続的活動にストック価値を持たせ、ゲーム上の有利なインプットとしての意味を与える仕掛けと言える。結果、サービスに貢献してきたメンバーほど得られるリターンが高まるミッション・報酬のフィードバックのメカニズムがソーシャルサービスに働き、ソーシャルサービスに習慣性・中毒性が産まれる。
(文/情報流通ビジネス研究所 SNS・ソーシャルアプリG+梶村  徹)

※本記事は、情報流通ビジネス研究所発行レポートの内容を不定期で掲載しているものです。同分野における経営企画や事業戦略、サービス企画等に携わる方々には、「モバイルSNS/ソーシャルアプリの事業分析と市場規模予測」(コンプリート版)のご活用をお勧めします。

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