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NSNによるモトローラ無線インフラ事業買収の狙い(第2回)(2010/09/01)
欧州圏に代表される通り、GSM/UMTS系のオペレータは、いってみればLTEをすぐ始めるもよし、かなり先延ばしにすることもできる。ユーザーの多くが音声とSMSしか使わない現状に鑑みれば、スマートフォンが普及してきて、3Gやその発展バージョン程度では、とてもトラヒックの増加に対処しきれない、あるいはビットコストが高くて儲からない――というフェーズがすぐ訪れない限り、結構のんびりできるという選択肢もある。

LTEに直行するCDMA市場

他方、ネットワークのアップグレードという点において、マルチキャリア化による多少の高速化を施した後、CDMA系オペレータの選び得る選択肢は、LTE かモバイルWiMAXかといった程度しかない。現在の趨勢からすれば、音声伝送路としてCDMA2000 1Xを残しつつLTE(LTE-FDD)に直行するというのが、基本的なロードマップとなる。あとは、モバイルWiMAXやTD-LTEといった、TDD 系ネットワークをどう絡めて彩りを添えるかといった具合である。

したがって、エリクソンとともにLTEビジネスの展開を本格的に図ろうとするNSNにとって、現在のCDMA市場は最も手っ取り早くLTEインフラ事業に 着手できる分野であり、何としてでも今から参入しておくべき重要なマーケットだ。実際のところ、ベライゾンやKDDIは2010年内~2012年という時 期にLTEサービスを立ち上げる。

最近では、商用とは名ばかりの「商用トライアル」が多いが、本格的なLTE商用サービスを2012年までに始めるのは、実質的にこの2社とドコモくらいの ものであろう。エリクソンやNSNにとって、これらは絶対押さえるべき顧客なのである。LTEビジネスを軌道に乗せるにあたり、CDMAオペレータに入り 込むのは、両社にとってある意味で必然的な動きといえる。

TD-LTEビジネスの大きなドライバーに

NSNは、ノーテルの事業買収でエリクソンに敗れ、今後のLTEビジネスに直結する北米CDMA市場で遅れをとった。が、モトローラのインフラ部門買収に より、ようやくエリクソンに追随することができたといえる。エリクソンは、ノーテルのCDMA/LTE/GSM事業を合計約12億ドルで買い取り、NSN もモトローラのインフラ部門買収に12億ドル使った。

両社ともに同じ金額を積んだことになるが、NSNによるモトローラのインフラ部門買収のメリットは、それだけではない。

モトローラはかねてから、WiMAX/モバイルWiMAXにおけるTDDベースのOFDM系技術の実績をもとに、中国TD-LTE勢の懐に深く入り込んでいた。かてて加えて、同社はアナログ時代から莫大な投資を背景に、有形無形に中国との深い関わりを持っている。

上海万博で明らかになったように、中国勢はモトローラやアルカテル・ルーセントといった、最近のインフラ市場ではある意味で「負け組」に属しながらも、モ バイルWiMAXなどTDD-OFDM系インフラで、商用ベースの実績と運用リソースを抱えるベンダーを自陣に招き入れるという動きをとっている。

これに対し、もともとFDDベースでのLTE推進を図っていたエリクソンやNSNは、ことTD-LTEに関してみると、やや出遅れ気味の感があった。WiMAXも含めTDDシステムに対して、否定的な見方をする時期もあったほどである。

このようにしてみると、NSNがモトローラのTD-LTE部門をも手中に収めたことの意義は大きい。単純な比較はできないものの、TD-LTEビジネスに 入り込めることを踏まえれば、エリクソンと同じ金額をはたいてモトローラのインフラ部門を買収したのは、かなり「お買い得」だったといえるかもしれない。

TD-LTEは中国のみならずインドやロシア、北米など、各国のモバイルWiMAX事業者が今後の導入を決定あるいは検討している。これからのグリーンフィールド市場の存在も考え合わせれば、その潜在的な市場規模はLTE-FDDを凌ぐとみることもできる。

TD-LTEを巡り急転直下の動きの予感

前回で述べた通り、LTE-FDDの導入先は、これまで脈々とFDDベースの携帯電話事業を行ってきたオペレータが主流である。すなわち、LTE導入にい たるまでの経路やスケジュールは多種多様である。これに対し、TD-LTE導入までのロードマップは、それほど複雑なものではない。

もはやTD-LTEは ダークホースの域を超え、次世代モバイルインフラ市場で大きなプレゼンスを発揮しようというところまできた――といえそうだ。

この秋、TD-LTEを巡るひとつの大きな動きが出てそうな気配濃厚である。
(文/情報流通ビジネス研究所 所長 飯塚周一)

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