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特集・ソーシャルビジネスの勃興とモバイル化――iPhoneの研究(第2回)(2010/10/21)
なぜ、iPhone経済圏のアプリ課金市場規模は、日本のガラパゴス市場に比べて、一桁小さいままなのだろうか? 第1の理由は、アップル端末は売れ筋であっても、携帯端末市場全体で圧倒的なシェアを占め続けることまでは難しく、累計加入(稼動)者数ベースのシェアがある程度限定的にならざるを得ないからである。
(2)Appleにおける垂直統合型収益モデル分析 独自の世界観に忠実なエコシステムの構築 もしアップルがアプリケーションレイヤーで覇者となることを最終的な目標に据えているのであれば、アップルはユーザー接触面を拡大しユーザー交流を活性化するため、下記の手順のようなオープン化による拡大路線を選択することになろう。 A. 他キャリアへのiPhone端末提供を通じた圧倒的なシェア獲得 B. iPhoneOS/付属ミドルウェアの外部端末メーカーへの提供、オープンソース化 C. iTunes/AppStore 等の開発環境のオープンソース化、他社ミドルウェアとの互換性確保 D. その上で、iTunes上でのSNS機能提供 しかしアップルは、端末~iTunes~AppStoreからなるエコシステムを、セットで各市場における特定の通信事業者のみに販売、さらには端末販売数のコミットや、販売奨励金およびプロモーションでの全面協力要求、販売チャネル選定・サポートに関する有利な条件を、通信事業者に丸呑みさせている。 通信事業者に対するパワーバランスの妙 こうした手法で、アップルはiPhoneで相当高い水準の営業利益を叩き出している。これは、携帯電話端末メーカーの最大手で最も利益率の高いNokiaの約3倍にのぼる利益率である。そうであれば、高利益率の源泉である垂直統合のビジネスモデルを自ら水平分業に変えていくことは、すなわちアップル(CEOのSteve Jobs)の世界観に忠実なエコシステムと革新的メーカーとしてのブランド力を揺るがすことに他ならない。 同社にとって水平分業化を行うことは、通信事業者との力関係を自ら弱め、他社並みの利益率への低下を招く自殺行為になる可能性が高い。今後、仮にアップルがビジネスの水平展開に踏み切るとすれば、 ・行政としての競争政策上の要請・義務化からやむを得ず受け入れるケース ・複数の通信事業者を天秤にかけて、なおも通信事業者がアップルにひれ伏すような、端末としての競争優位性が今後も保てるとアップルが判断できる場合 ――等の特殊なケースにおいて、垂直統合型ビジネスモデルでの自らの通信事業者に対するパワーバランスを崩さない範囲で、限定的な手法を用いることになるものと予想される。 プロモーション・ツールに過ぎないiPhoneアプリ iPhoneアプリは、ダウンロードに対する課金を基本方針とし、サービスに対する月額課金という概念が基本的にない。そのため、有料課金の機会がダウンロード時の1回に限定されることが、iPhoneアプリが儲からない理由として挙げられることもある。だが、AppStoreのアプリ内の追加課金自体はすでに導入されており、今後アイテム課金を中心として活用が本格化していくと考えられる。 それよりも留意すべきなのが、アップルにおける関心の持ちようである。継続課金によって、既存アプリケーションを潤わせるエコシステムの安定化を助けることなく、iPhone新バージョンの革新性を保つため、新規性あるアプリケーション(できれば無料)をとっかえひっかえヒットチャートで露出し、TVCMでアピールすることでデベロッパーを競争させてエコシステムを揺さぶり続ける、絶え間ない競争促進の旗を振ることの優先度はかなり高い。 すなわち、アップルにとってiPhoneアプリケーションとは、端末を売り通信サービス収入を生み出すための、プロモーション・ツールに過ぎないのである。 SAPに"焼畑農業"を強いるノンパートナー SAPから見ればこのことは、アップルの競争促進政策の下、常に無料・低単価の新規アプリが自社既存アプリの地位を脅かし、対抗上課金手段はダウンロード販売時のみで、追加課金・継続課金の機会が実質的に奪われる、「焼畑農業」を迫られるということである。 そもそも、アップルにおいて、コミュニケーションツールは音楽や電子書籍と同じく、ダウンロード販売対象の「アプリ」の一種に過ぎない。アプリケーションのダウンロード後、コミュニケーションサービスを活性化させ、それを様々なアプリケーションの運営・および顧客獲得のプラットフォームとして活用する発想はもとよりない。その意味でアップルは、SAPのビジネスとは切り離れされた存在と言える。 もちろん、アップルのiPhone/iTunes/AppStoreからなるエコシステムが、ソーシャルアプリケーションの新たな地平線を切り開いた功績は、高く評価する必要がある。ただ、アプリのオープン供給やユーザーレビュー・ランキング等の部分で、アップルは一部ソーシャルビジネスを体現する存在を標榜しつつも、NTTドコモと同様、自身が君主として君臨する経済圏を志向する「垂直統合」という、DNAを持つ存在 であることは否定しがたい。 したがってアップルは、未来のソーシャルアプリビジネスの可能性を示す道標ではあっても、ユーザー間のコミュニケーションを促し、継続的なARPUを稼がせるソーシャルアプリケーションビジネスの健全な育成を支援するプラットフォーマーではなく、SAPサイドからすれば、ともに発展を目指すパートナーとは評価し得ないといえよう。 SNS機能「ping」で問われるAppleのDNA 2010年9月、AppleはiTunesの最新版(iTunes10)上の新サービスとして、音楽SNS機能「ping」を発表した。Pingの登録数が数日で100万人を突破したことが話題となっているが、音楽配信分野でのiTunesのシェアを考えれば、その規模自体は別に不思議なことではない。 垂直統合戦略をDNAとするAppleは、ユーザー間ないしユーザー・アーティスト間の自由なコミュニケーション・インタラクションの活性化に真剣に取り組めるだろうか。Amazonや楽天の取り組む「ソーシャル」が、結局は商品販売促進のためのプロモーション・ツールの域を出ず、盛り上がりに欠けるなかで、Appleの真価が問われる。 (文/情報流通ビジネス研究所 SNS・ソーシャルアプリG+梶村 徹) ※本記事は、情報流通ビジネス研究所発行レポートの内容を不定期で掲載しているものです。同分野における経営企画や事業戦略、サービス企画等に携わる方々には、「モバイルSNS/ソーシャルアプリの事業分析と市場規模予測」(コンプリート版)のご活用をお勧めします。 ※ 2015年までの各種の市場予測値や詳細な分析に加え、プレゼン資料作成に便利な図表データ(Excel)も活用可能です。大手企業だけでな く、各種デベロッパーやCPなど、モバイルビジネスに取り組むベンチャーにもお使いいただけるよう、プロ向けの調査資料としては破格の9,800円でご提供しています。詳細はこちら [コラム関連記事]
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