情報流通ビジネス研究所
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2010年度、フェムトセルの国内市場が離陸へ
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モバイル/ワイヤレスブロードバンド時代の本格的な到来を迎えるにあたって、よく聞かれるようになってきたのが、「LTE vs.モバイルWiMAX」という比較論である。メディア各社の報道ぶりからして、概ねLTE優勢という状況らしい。
欧米をはじめとして、MVNOが世界的にメジャーな存在として認知されつつあるなか、新たな産業の芽となり得るMVNOが日本で一向に進展しなかったのも、ひとつには前回で取り上げたような事情があった。こうしたことから行政サイドは、既存の携帯電話事業者に対して直接的にMVNO接続義務を課すことは見送り、「ネットワーク事業というものには本来的に接続義務がある」という、電気通信事業法の「そもそも論」を用いて、MVNOに対するインフラ供与を携帯電話事業者から婉曲的にとりつけたのである。
総務省は、移動通信分野でのオープン化を喫緊の課題として強力に推し進めている。例えば2007年、議論百出したモバイルビジネス研究会では、携帯電話事業者の端末販売インセンティブモデルの見直し(通信料金と端末料金の会計上の分離)やSIMロックの是非、プラットフォーム連携の必要性、そしてMVNO参入の促進といったテーマが公開の場で大いに議論された。
2.5GHz帯における事業展開を目指し、携帯電話キャリアを中心に形成された4社がこぞって申請したBWA(ブロードバンド・ワイヤレス・アクセス)は、UQコミュニケーションズとウィルコムの2社が事業免許を獲得することで決着をみた。2007年12月のことである。それから1年半後、国内初の本格的な無線ブロードバンド・サービスとして、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX「UQ WiMAX」の商用サービスが2009年2月より開始された。
コミュニケーション系や娯楽系のデータ通信アプリケーションやコンテンツビジネスは、それぞれの国の文化や生活習慣によって左右される部分が多い。一時期ブーム化したモバイルCPの海外進出も、実を結ぶことはできなかった。これに対し、企業向けモバイルソリューションビジネスは、ユーザーの目的とする部分において国境の違いはない。利益向上や合理化はどこの国の企業でも一緒である。
MVNO参入を契機とする、端末メーカーの旧弊脱却シナリオをこれまで示した。そうはいってもメーカーは、やはり国内事業者の端末製造部門として延命を図ろうとするのか、それとも現状に見切りをつけ、情報家電や宅内機器とネットワークをセットにした、総合サービス戦略に向かおうとするのだろうか。
メーカーが1社単独でMVNOを旗上げするだけでは、とてもMNOのトラヒック向上が望めず、影響力が出ないなら、端末メーカーの共同プラットフォームとして、ひとつの大きなMVNO組織体を立ち上げればいい。
MNOやMVNOに納入するだけでなく、メーカー自身がMVNO参入を果たすという、新ビジネスの可能性も考えられる。完全オリジナルで企画・開発した携帯電話やモバイル端末、あるいは専用端末、M2M機器といったものを、自らが全面的に関与するチャネルで、ネットワークサービスと一緒に販売する。
国内の携帯電話端末メーカーは、外部環境のめまぐるしい変化に囲まれながらも、1994年に行われた端末自由化以来、10余年にわたり事業者依存のビジネスモデルを継続させてきた。
国内市場の飽和に伴って、ここにきて叫ばれるようになってきたのが、日本の携帯電話産業の国際競争力強化だ。これまで、国内の携帯電話事業者や機器ベンダー、コンテンツプロバイダといった主要プレーヤーは、海外にビジネス展開してきたものの、果実を得るところまでは至っていない。
MVNOが本領を発揮するのは、MNOとは異なる領域でのサービスや付加価値の提供という点にある。単なる料金値下げ競争が進むのではなく、これからはサービスの中身が問われる質的な競争が活性化していく。その結果、今までにはなかったサービスの価値観やCS向上ノウハウ、埋もれていたアプリケーションが登場するものと期待されている。
固定系ブロードバンドの世界では、通信事業者の網設備を借り、ISPがインターネットサービスをエンドユーザーに提供している。この無線版が「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動通信事業者)である。
フェムトセルは、基本的に3段階のステップを経て高度化していくだろう。「屋内カバレッジの改善ツール」から「FMC/FMSのための戦略ツール」へ、そして「ホームゲートウェイ/ホームネットワークのコアデバイス」という道筋だ。先に挙げたフェムトセルの実現方式も、これらにあてはめて考えることができる。Iub over IP/集線装置型は屋内カバレッジの改善として、UMA型は現実的なFMC/FMSツールとして、IMS型は最終ステップのホームゲートウェイ/ホームネットワーク実現まで含めた戦略商品――といった風である。

システム形態や導入動機にはそれぞれ温度差があるものの、フェムトセルに対する各国の通信事業者の関心の高さは日増しに高まっている。その根底にあるのは、ユーザー宅内における「ケータイ利用率の高さ」にある。やはり、どこの国でも携帯電話は、固定電話よりパーソナルな通信手段なのだ。

ある国内携帯事業者の場合、全トラヒックの約8割は室内で発生するともいわれる。そうした傾向は日本だけでなく、他国も同様だ。また3Gが進むなか、宅内データ通信の比重もおのずと高くなっていく。

Iub over IP型では、携帯電話ネットワークのRNC(Radio Network Controller:無線制御装置)をそのまま使う。RNCが屋外基地局と同様にフェムトセルを制御する形だが、RNCの処理量が膨大になるため現実的でないとされる。そこで、これを発展させたのが集線装置型と呼ばれるものだ。

家庭やオフィスなど、屋内に敷設されたブロードバンド回線を経由して、携帯電話のコアネットワークに接続する超小型基地局がフェムトセルだ。フェムトセルから発せられる電波の出力は、一般的に10m~20mWとされる。エリア半径にして数10m程度――と、家庭向けコードレス電話のサービス範囲と同じイメージである。エリアカバレッジが半径数百mから数kmのピコセルやマイクロセル、マクロセルといった既存の携帯電話基地局と比較して、セル半径がかなり狭められていることから、10のマイナス15乗を示す「フェムト」という名前がつけられた。

すでに、国内の携帯電話加入者数は7000万人を超えた。乳幼児や老人層を除く実質的な利用者人口からすれば、大方は「行き渡った」感すら漂う。最近では「携帯電話市場の飽和」が伝えられ、NTTドコモやKDDI、J-フォンといった通信事業者(キャリア)の戦略転換がクローズアップされてきた。