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スマートフォン大競争時代・第9回(モバイルインターネット要覧2011より)(2010/12/20)
国内端末ベンダーのAndroid OS搭載スマートフォン戦略にあっては、現状をみる限り、まず国内事業者の意向を反映させたスマートフォンを開発し、それから日本ローカル仕様を外した上で、海外展開を図ろうとの動きが主流といえる。
日系端末ベンダーのスタンスとAndroid OS しかし、オープンなOSであるAndroidを採用したスマートフォンを、国内事業者の意向に沿って開発・製造するというのは、これから海外展開を本格的 に進める上では、決してプラスの要因にはならないだろう。オープンソースのOSのもと、メーカー自らがフリーハンドで開発したものと異なり、事業者の関与 があるということでは、端末事業の構造は従前と全く変わらないからである。 国内の事業者起点・事業者依存の端末ビジネスが失敗に終わった点に関しては、本サイトの別コラム「ガラパゴス携帯市場の本質」(第1回・第2回)で言及しているので、本稿では割愛する。 もはや国内の携帯電話端末は、機能的に見て海外で取り沙汰されているスマートフォンの領域に達している。それに加え、日本国内のユーザー・ニーズに合わせ た特別仕様をAndroid搭載スマートフォンに盛り込み、海外向けには特殊機能のダウンサイジングを図って転用するのは、本来順序が逆であろう。開発に関わるコストも効率が良いとは考えにくい。 海外展開を考えるのであれば、開発のフローとしては日本向けとの想定を排除し、欧米など主要な先進マーケットにおける販売を前提にしたベーシックな設計・ 開発を進め、これをもとに対多言語化や地元オペレータの要求・仕様に合わせるのが良策であろう。ワンセグやFelicaといった日本ローカル仕様の追加 は、あくまで海外向けと同等の位置付けにすべきである。 企画・開発段階から、日本の事業者ローカル仕様が入り込むのは、極論すれば他地域に向けたきめ細かなローカライズにとって邪魔になるばかりか、商品コンセプトの不明瞭化や価格と機能のミスマッチなどを招く可能性を高くする。その結果として商品力や価格競争力に欠け、海外個別マーケットでの競争に負けるというのでは、一体何のためにオープンソースのAndroid OS搭載スマートフォンを製造したのか、意味をなさなくなる。 端末大手寡占の崩壊と日本勢の商機 従前からの事業者との関係もあり、また一定の安定的な売り上げが見込めるとあって、海外での市場展開を優先するAndroid搭載スマートフォンの開発体制は、現実には難しいものと推察できる。しかし、今後にわたりこのような体制を続けることは、海外市場進出に本気で取り組むことを半ば放棄しているに等しい。 2010年第3四半期の決算で、スマートフォンの出荷が好調だったサムスンが躍進する一方、同じ韓国勢のLGがスマートフォンの遅れで同四半期に99%という大幅な損失を出して、対照的な結果となった。他方Appleは、同時期に携帯電話全体の世界シェアで、RIMやソニー・エリクソンを抜き、グローバル・ビッグ5の一角に食い込んでいる。 さらには、iPhoneやAndroid搭載スマートフォンの進撃で、Symbianに拘泥するノキア包囲網が築かれ、携帯電話の国際市場における同社の地位も揺らぎ始めてきた。とどのつまり、もはやグローバル端末市場の主戦場はスマートフォンに移り、新たなパラダイムのもとでグローバル市場での競争が開 始され、それとともに長らく固定化されてきた端末ベンダーの力関係に亀裂が入ってきたとみるべきであろう。 すなわちこれは、PC系なども含めたベンダーが入り込めるチャンスが巡ってきたことに他ならない。日本勢としても、千載一遇の商機を見逃す手はないはずである。 旧弊から脱却した国産端末ベンダーの事業展開 こうした環境変化を捉えて、海外市場における国内端末ベンダーが再起していくためには、旧弊を打破した大胆な戦略が要求されるだろう。 繰り返しになるが、まずはベースとなるAndroid OSモデルをフリーハンドで設計・開発し、地元オペレータとの交渉のもとでローカライズを施しながら、アフターも含めた販売チャネルを確立し、それぞれの市場に進出することを大前提とする。国内市場向けはあくまでその一環であり、日本向けのローカライズという位置付けに基づく戦略がこれから重要になっていくと思われる。要するにポイントは、最初の段階で国内事業者の関与があるかないか――ということである。 サムスンのように、事実上自国内市場からAndroid搭載スマートフォンを発売し、高評価の感触を得た上で、海外の各市場に大胆な流通網を敷く形もあ る。しかし、これは国内オペレータとの力関係、すなわちサムスンの韓国内における立場の強さがそのようにさせているとみることができる。 翻って日本の場合、過去の経緯や事業者が高度なR&D部門を有しているなど、海外とは事情が全く異なることから、大局的に見れば「自国発海外展開」はマイナスに作用する公算が高い。 iPhoneで火がついた先進国のスマートフォン需要と、グローバル端末ベンダーが維持してきた旧体制崩壊の予兆は、海外戦略で苦杯をなめた日本の端末ベンダーにとって、千載一遇の好機といえる。そのためには大胆な決断が求められる。 国内事業者との折り合いがつかず、仮に国内マーケットに向けた販売が叶わなくとも、国内市場規模は全ての携帯電話を合わせても年間せいぜい約4000万台 である。これに対して世界市場は、スマートフォンだけですでに1億台を超えようとしている(2010年・情報流通ビジネス研究所見込み)。 世界の携帯電話端末需要をスマートフォン買い替え予備軍として見立てれば、年間10億台を超えるスケールである。もちろんこのなかには、スマートフォンへの買い替えが期待できない新興市場向けのローエンド需要が相当数ある。が、それを差し引いたとしても、国内とはマーケット・スケールはケタが異なる。 そうした点を踏まえて、数量は僅かながらもリスクのない国内市場で行くか、海外ビジネスを志向して風呂敷を大きく広げるか、そろそろ両者を天秤にかけねばならない、大きな曲がり角に差しかかりつつあるといって差し支えないだろう。(了) →詳細 ※本記事は「モバイルインターネット要覧2011」の内容を一部抜粋したものです。
(文/情報流通ビジネス研究所 所長 飯塚周一)
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