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スマートフォン大競争時代・第5回(モバイルインターネット要覧2011より)(2010/12/16)
BlackBerryやiPhoneといった独自のクローズドOSは、1社単独または1オープンソース・グループでOSプラットフォームのハード/ソフトウェアを開発しなければならない。リリース当初は一時的に成功しても、その後事業継続できるかどうか、見通しが効きにくいというリスクを孕む。これに対してGoogle/OHAが開発を続けているオープンソースのAndroidは、プラットフォームのみを無償提供している。

すなわち端末ベンダー は、自社製品に無償でAndroid OSを搭載・改変可能になるだけでなく、端末がAndroid OS搭載であれば、ベンダーの違いを超えて世界中で同じソフトを利用できる。この点は、世界最大の検索エンジンを有するGoogleの各種サービス連携や ブランドカとともに、ユーザーにとって大きな魅力になっている。

iPhoneに比してAndroidのリリースは遅れたが、OSのバージョンは現在早くも2.2にまでアップグレードしている。Androidの各種通信機能からユーザー・インターフェースにいたるまで、多様なユーザー・エクスペリエンスの向上を目指すOHAが、有効に機能していることの証左といえよう。

Androidを搭載したスマートフォンは、台湾のHTCが初の搭載機を出して1年余の2009年には、出荷台数が約680万台・シェア3.9%という市場の立ち上り方をした。これをAppleのiPhoneと比較すると、革新的なスマートフォンを初めて出したことに加え、1社で大々的なプロモーションを仕掛けたこともあり、Android搭載スマートフォンよりiPhoneの方が急速な立ち上り方だった。

この時のAndroid搭載機は、一般消費者には馴染みの薄いHTCが先陣を切った形であり、その後モトローラが「DOROID」を出したというものの、 世界で広く販売されたというわけでもなかった。製品プロモーションにいたっては、AppleのiPhoneに到底およばない。

しかし、ここにきて様相は異なってきた。

2010年に入り、モトローラやHTCといった先行組に続き、サムスンやソニー・エリクソンなどのグローバル大手、中国のファーウェイやZTE(中興)、 そして日本勢などの端末メーカーが続々とAndroid搭載スマートフォンの発売に踏み切っている。そしてこの勢いは、ますます加速している。

Android搭載スマートフォンで、大きな動きを見せ始めたのが、グローバル端末ベンダー世界2位のサムスンである。サムスンのAndroid搭載ス マートフォン「Galaxy S」は、2010年5月シンガポールでの発売を皮切りに、同年7月上旬までに世界21カ国で発売され、お膝元の韓国ではSKテレコムが2010年6月に発 売してから1カ月で約50万台、9月までに約110万台以上が販売されるというヒットを飛ばした。

海外でも欧州などでは、iPhoneと全面的な競合状態にあるといわれ、iPhoneに劣らない商品力を有している。日本でもNTTドコモから2010年10月に発売されて話題を呼んだ。また、AppleがiPhoneに続きiPadを出したのと同様、サムスンも同様のスケールアップ・エンジニアリングで タブレット型端末「Galaxy Tab」を投入し、キャッチアップを図っている。

Android OSによる端末販売のパラダイムシフト

2010年から本格的に立ち上がったAndroidOS搭載スマートフォンは、参入企業数やオペレータの販売チャネル数からみて、同年には早くも iPhoneを抜きにかかるだろう。2008年に登場して、僅か2年でスマートフォン市場シェア2位の座につけるというのも、無償のオープンソースOSに多くのベンダーが賛意を示し、市場参入しているからに他ならない。

Android OS搭載機はその後も急拡大の一途を辿り、2012年にはSymbianOSを抜いてスマートフォン市場シェアのトップに駆け上がり、独走状態に入っていく。2015年には、世界の携帯電話端末市場全体の約3割がAndroid OS搭載機で占められると予想する。

別の見方をすれば、2015年頃にいたってAndroid OS搭載機は、スマートフォン向け高機能OSとの位置付けから脱し、携帯電話端末向け汎用OSとしてのポジションを獲得している格好である。つまり、スマートフォンやハイエンド、ミッドレンジ、ローエンド向けといった区分は、あまり意味を持たない。

過去の例を持ち出すならば、Symbianの各シリーズやLinuxなど、グローバル端末ベンダー大手が主導していた携帯電話OSにとって代わる地位を得るわけである。前回みた通り、新興市場に残されるGSMネットワーク向けの、極めてローテク/超安価な携帯電話端末向け以外は、もはや現在で言うところのスマートフォンOSが、当然のように組み込まれる世界だ。

現在のスマートフォンという定義も大きく変化する。搭載チップやメモリ、あるいは筐体の材料やデザインといったハード上の差別化ポイントによってのみ、端末のプライシングが行われ、ハードに依存しない付加機能の有無は、全て購入者の意思によって規定されることになる。

予め搭載される付加機能の有無によって、値付けや対象ユーザーのカテゴライズが行われていた、従来の携帯電話端末の在り方や在庫管理・流通・販売方法のパラダイムを、Android OSは大きくシフトさせるはずである。

これまでの携帯電話端末流通は、「全部入り」のフラッグシップ端末から不要な機能を削ぎ落してラインアップを拡充する「引き算」の商品企画や、それに基づく生産/在庫管理、販売・マーケティングという一連の構造で成り立っていた。しかしこれからは、顧客の嗜好やスキルといった各種属性によって、端末のフィーチャーを販売の現場で決定して値付けを行い、販売後もユーザーの意思によって付加機能を盛り込んでいくという、「足し算」の形態へと変わっていくだろう。

スマートフォン向けとして登場したAndroid OSであるが、本質的には携帯電話に関わるビジネスの将来に向けた構造転換を促す象徴――といって差し支えないのである。(次回に続く) →詳細
※本記事は「モバイルインターネット要覧2011」の内容を一部抜粋したものです。
(文/情報流通ビジネス研究所 所長 飯塚周一)

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