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スマートフォン大競争時代・第4回(モバイルインターネット要覧2011より)(2010/12/15)
Appleにとって、Android搭載スマートフォンの販売本格化による数量シェアの低下は、織り込み済みの展開であろう。むしろ2007年の登場以来、筐体の基本的なデザインを大幅に変えることなく、事実上の単独モデルで数量を伸ばし、現在にいたっていることの方が驚異的といえる。

Appleが今まで採ってきた統合化戦略からすれば、今後劇的に端末の数量を伸ばすことは考えにくい。また同社自身、他の端末ベンダーのような、世界規模 のスケールを追うことには執着しないものと思われる。これからAppleは、単なるハードの量産によって得られる収益ではなく、iPhoneの普及をベースにしたサービス統合化による収益の確保に軸足を移していくだろう。

例えば現在、AppleはSIMカードメーカーと協力して、iPhone向けの書き込み書き換え可能なSIMを開発している。NFCを介した少額決済やクレジット機能をiPhoneに付すことにより、現在のiTunesのブラッシュアップを図る狙いがあるとみられている。

すでにAppleのiTunesでは、アクティブなクレジットカードアカウントを1億6000万件持つとされ、楽曲や映画、アプリ、アプリ内購入などのデ ジタル商品の決済のすべてをiTunes経由で行っている。このようにiTunesは、少額決済取引の統合システムとして機能しているが、Appleはこれをより進化させてクレジットカード同様の感覚で、各種デジタルコンテンツや商品の代金を電話料金に加算できるような仕組みを検討しているとの観測もある。

当然Appleは、現在以上にiTunesでアプリや歌や映画を売るのが容易になる。これに加え、クレジットカードを持てないような新興市場ユーザーや、米国等における先進国の移民層に対しても、iPhoneの新たな訴求ポイントを打ち出せるだろう。

なかには、いずれオペレータからの電話料金請求書がiTunesにとって代わり、それまでオペレータが少額取引処理に課していた手数料を不要にできるとみる向きもある。その際Appleは、手数料を自ら徴収するとともに、iPhoneユーザーにポイント還元してiTunesストアなどでの購買につなげるといった、自らの経済圏を拡大させることができる。

オープンOSという物量に対するAppleの打ち手

さまざまなベンダーから今後繰り出されるAndroid端末が、早晩量的にiPhoneを凌駕したとしても、Appleは端末シェアの低下によるダメージを極力受けることのないよう、量的な競争軸を回避する方向にある。iTunesといった既存の成功モデルも統合させ、自社内に閉じたエコシステムをより堅牢なものとし、独自の路線を進むと予想される。

このことは、Appleが複数のオペレータとの契約のもとで、グローバルなMVNO事業の検討を行っているとされることからも推察できる。

オープンOSであるAndroid端末勢は、オープンであるがゆえに参画する企業が一枚岩となって、Appleの統合モデルを突き崩すにはいたらない。アプリケーション・ストアひとつとっても、Android端末を個別に扱う端末ベンダーやオペレータそれぞれが、おのおのの方針に基づき開設し、課金方法やその水準、レベニューシェアを決めることになる。多くの企業が参画し、呉越同舟にも似た状況のなかで、これらをまとめ上げるのは至難の技に近い。

とりわけ、アプリやコンテンツ、サービスに対する決済手段に関しては、iTunesに比肩し得る統合化された一気通貫のシステムをベンダーが持っていない以上、基本的にはオペレータと個別に組んで何かをやるという形になる。このことは、携帯電話というハードウェアがASP(端末単価)の高いスマートフォンに変わろうとも、端末ベンダーのビジネスモデルそのものは、従前と本質的にさほど変わっていないとみることができる。

換言すれば、Appleを除く端末ベンダーのスマートフォン事業とは、世界規模の生産・販売スケールの上に立って、ハードウェア販売から生ずる差益を追求するという、これまでの事業モデルの延長に過ぎない。これをApple側から眺めれば、他のスマートフォンが例え圧倒的な数を誇ろうとも、単に母数が増えただけで、具体的に脅威となる何らかの要素は見当たらない、という風に映るだろう。

Appleにとって、OSシェアでみれば将来仮に10%に落ち着くようになっても、統合化されたサービスから得られる収益は、いわば予め約束されたものである。その意味でiPhoneは、Appleの統合サービス戦略を極大化していくための、単なるハードウェア・ツールへと今以上に再定義されていくと考え られる。

スマートフォンのシェアで10%といっても、年間1億台以上の出荷が見込まれるというのは、同社による統合サービスへの入り口が年々1億増えることに他ならない。

現在から5年も経過すれば、スマートフォンの定義すら怪しくなる。つまり、携帯電話としては当たり前の姿になっており、Android OS端末間の価格競争は相当激化しているはずである。iPhoneもハードウェアとしては、そうした価格競争に巻き込まれるだろうが、あくまで自社による統合サービスへの誘い水と捉えれば、ハードの価格競争で疲弊してモバイル端末事業から脱落することは考えにくい。

このように、生産コストと最終製品の差から生ずる収益を追う、ハードベンダーのビジネスモデルとは全く異なる位相で、Appleはモバイルビジネスを進めている。現在、iPhoneは他のスマートフォンと同じカテゴリーで捉えられ、その販売数やシェアが取り沙汰される。しかし、両者間で追い求めるものが異なる限り、iPhoneは独自の存在としてこれからも存続し続けるものと思われる。(次回に続く)→詳細
※本記事は「モバイルインターネット要覧2011」の内容を一部抜粋したものです。
(文/情報流通ビジネス研究所 所長 飯塚周一)

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