情報流通ビジネス研究所
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03/16

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特集「モバイル・ソーシャル」プラットフォームの今後(第2回)(2011/05/24)
ソーシャルサービスは、いずれもまだ産声を上げたばかりであり、その成熟度はまだ低い。ましてや、モバイル・ソーシャルのビジネスの今後の発展は、まだ暗中模索の段階である、そのなかで、ソーシャルサービスへの参入を検討する企業からは、どのプラットフォームにおいてもエコシステムが未成熟で、ビジネスの組み立て方が分からない、という嘆きが聞かれる。

(2)モバイル・ソーシャル時代と日本企業の商機

プラットフォームを補完するenablerへの挑戦

ただ潜在市場があるのに、どのプラットフォーマーもソーシャルサービスに必要な機能を提供してくれないと本当に考えるのであれば、不足するパーツは自ら補い、自社の強いアプリケーション分野や利用シーンをターゲットに、プラットフォームとしての役割を補完的に担う「enabler」の役割を狙う気概、ひいては自身が新たなプラットフォーマーとして名乗りを上げる勢いも、場合によっては必要ではないだろうか。

ソーシャルゲームを核に、モバイルSNS市場を切り開いたDeNA(モバゲー)は、次にそれを基盤に総合モバイルポータルへの水平展開を目指したが、ゲームに投資を集中させる弱者の戦法を徹底したグリーの猛烈な追い上げを受け、モバイルSNSとしてのリーディングポジションが一時期揺らいだ。その際、ソー シャルゲームに特化した開発・供給・集客機能を提供するenablerへと素早く方向性を修正することで、市場ポジションを回復することに成功した。

軌道修正による復活後、DeNAは矢継ぎ早に次の策を打ち出している。すなわち、2010年4月に日本のヤフーとの間で業務提携を発表、ヤフーが保有する 大量の会員IDを利用し、DeNAがその上でソーシャルゲームの機能・コンテンツを移植する協業策を打ち出している。また米国のFacebookプラットフォーム(PC)上で、SAPとして実験的な世界展開を開始した。

近い将来、iPhoneやAndroid等のスマートフォンプラットフォームに、SAPとして参入するのではないかと噂される。

市場の発展段階や自社の競争力に応じ、ある時はプラットフォーマー、ある時はアプリケーションレイヤー企業あるいはその中間のenablerとして、自らの立ち位置を変えるDeNAの柔軟性には、目を見張るものがある。

もちろん、高い利益率と株式価値を背景にした財務体力というアドバンテージの存在や、グリーの攻勢に背中を押された面はあったにせよ、モバイルソーシャルゲームの経済圏の心臓部を押さえ続けるという一貫したテーマの下、それぞれの局面でどの 部分を自力で強化し、どの部分を外部資源で補うのかを柔軟に判断してきた、市場イノベーターらしい柔軟な姿勢が、DeNAの成功の秘訣であったと考えられ る。

BtoBプラットフォーマー戦略と現実の変化

現在mixiは、重大な岐路に立たされているものと思われる。同社の場合、日本においてはまだアクティブユーザーが1500万人規模に収まっており、米facebookのような全ユーザー参加に近い、圧倒的な地位を得たといえる状況にはない。

NTTドコモにせよGoogleにせよ、その技術やインフラが圧倒的な力を持ちえた要因として大きいのは、彼らがエンドユーザーをまず押さえ、かつ技術・ インフラのロードマップを展開し、その利活用で終始主導権を握るという、2つの条件を同時にクリアした点である 。

そうした観点からすれば、mixiがSAPを儲けさせ、mixiの集客力とロードマップに従うしかないと思わせるには、まだ力不足の感は否めない。日本発のソーシャル・プラットフォームに対する期待は大きいだけに、もう一段の非連続的な仕掛けが待ち望まれる。

日本のモバイルSNSビジネスに「黒船」は不要

モバゲーやGREEは、ゲームに最適化されたプラットフォームであり、ゲーム以外のコンテンツ・アプリケーション向けのSNSプラットフォームが日本のモバイル上ではまだ発達していない。かたや米国には、Facebookが有料課金ビジネスで成功、ライフログやソーシャルグラフを着々と溜め込み、スマートフォンも急速に普及している。その結果、いずれ日本に黒船が来襲し、「ガラパゴス市場はひとたまりもなくやられてしまうだろう」という意見がある。

だが冷静に見れば、米国のモバイル・ソーシャルビジネスの生態系は、確かに日本以上に先進的な一面はあるが、全体としては日本以上に発達が遅れている状況である。そうである以上、米国勢が日本のモバイル市場で本格的な影響力を行使できる態勢が整うのは、早くても数年後であろう。しかも、ソーシャルサービスが様々なコンテンツ・アプリケーション分野で本格化する将来、SNSプラットフォームは独占に向かうより、連携しながら複数が共存する形に進化する可能性も高い。

日本のモバイル企業が過去10年磨き上げてきたモバイルならではの表現性・操作性を活かすことで、アプリケーションや利用シーンに特化したサービスでエコシステムを日本企業が先に育て上げる時間はまだ残されている。

早期にカテゴリーキラーとしての地位さえ確立できれば、後発の米国製SNS(Facebook)にやすやすと切り崩されることはないだろう。更にはenablerとしてグローバルなプラットフォーマーと組み、世界展開を狙う戦略オプションも将来生ずるものと考えられる。

そう考えれば、進化の可能性が広がり始めたばかりの日本のモバイル・ソーシャルアプリケーション市場を、現段階で早くも「ガラパゴス」と呼び、今後の発展には「黒船」の到来が必然であるかのように語ることは、あまりに悲観的だろう。

生態系は日本企業が自らの手で編み出し、発展させ、更にはグローバルに攻め入っていく――との挑戦的な姿勢が、今まさに問われる局面なのである。
(文/情報流通ビジネス研究所 SNS・ソーシャルアプリG+梶村  徹)

※本記事は、情報流通ビジネス研究所発行レポートの内容を不定期で掲載しているものです。同分野における経営企画や事業戦略、サービス企画等に携わる方々には、「モバイルSNS/ソーシャルアプリの事業分析と市場規模予測」(コンプリート版)のご活用をお勧めします。

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