![]() | |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() | |
![]() | ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() | |
|
|
|
||
![]()
新刊・ご好評販売中
世界の先端に躍り出た北米テレコム市場の全容
携帯電話市場を取り巻く国内外の動向を分析
加熱するモバイルSNS/アプリビジネスを分析
2015年までの関連市場規模を予測・展望
大好評販売中 世界で存在感が高まってきた中国勢のTD-LTE。
混沌とする海外3.9Gインフラ市場の動静を分析
次世代サービス事業計画に必須
|
特集・ガラパゴス携帯市場の本質(モバイルインターネット要覧2006より)・第2回(2010/10/27)
ガラパゴス市場の本質を曲解した議論が少なくない。ガラパゴス現象とは何だったのか。原点に立ち返るべく、 2006年発行のレポートを2回にわたって全文公開する。掲載データや内容は古いが、5年前にその必要性を指摘した、メーカー再編もまだ途上といえよう。LTEへの端境期、かつスマートフォンというトレンドが押し寄せてきた今、3Gの失敗を繰り返すことなく、日本の競争力が向上するための参考になれば幸いである。
2. 事業者依存によるビジネスモデルの構造的疲弊 (1)マーケティングにおけるキャリア依存のツケ ①見かけはBtoC、本質はBtoBの市場構造 国内端末メーカーが欧米有力メーカーはおろか、技術力ではるかに格下だったはずの韓国メーカーに敗れた理由は、多々挙げられる。なかでも、日本メーカーが自らの技術を重んじるあまり、「プロダクト・アウト」手法に傾斜したのに対し、韓国メーカーは市場ニーズからの逆算で商品や開発・製造プロセスを企画・設計する「マーケット・イン」手法を徹底してきたという点が、よく指摘される。 これは当然といえば当然の見方ではある。しかし、コトはそれ以前の問題に拠るところの方が、むしろ大きい。それというのも国内メーカーは、今まで商品コンセプトや価格設定、販売数量、市場投入タイミング、全体としての商品ポートフォリオなど、マーケティング/企画の骨格部分を全て国内キャリアに握られ、マーケット・インに基づくビジネスを行った経験がない。 さらには、キャリアがメーカーごとの販売機種数、そして「90x」「70x」といった形で商品の投入時期を調整し、販売戦略の自由度を縛っているのだから、メーカーとしてごく僅かに彩りを添える程度の企画部分に、工夫を凝らしたところで、他社を駆逐してシェアを伸ばすことを期待するのは、土台無理な話というものである。 携帯電話端末は、一般的に典型的なコンシューマ(BtoC)製品とみられる。しかし本質的に見れば、国内メーカーが長年習慣的に行ってきたのは、完全にBtoBのマーケティング手法である。しかも不特定多数ではなく、少数あるいは1社という特定キャリアからの受注に依存する点や、発注者による需給調整が行われていることからすれば、日本の携帯電話端末事業とは、建設業などといった公共事業と同様のビジネスだといえよう。 とどのつまり、見かけとは全く異なって、BtoCマーケティングとは最も縁遠いところにある。この特殊な"鎖国市場"の経験則が、自由競争かつ不確定要素の大きい海外市場で生かせるわけがない。だが、普及率が低く携帯電話そのものに対する需要が旺盛だった頃――端的に言えば、特段の苦労なくしても"飛ぶように"端末が売れていた市場の成長期において、キャリアとの一蓮托生という関係の下で"共に儲かった"メーカーは、ほとんど目が曇らされていた状態だったといわざるを得ない。 加えて、突出した研究開発部門を持つという、世界で類を見ないオペレータであるドコモの海外事業展開をトレースすることにより、国内で味わった"おいしさ"が二度味わえるという、楽観に染まりきっていたこともあながち否定できないのである。 そうでなければ、実質的にはほとんどBtoCマーケティングの経験則も持たず、そして世界規模のSCM体制や確たるチャネルも持たず、海外グローバルメーカーから見れば"徒手空拳"にも近い形で、グローバルビジネスに臨もうとすることの無謀さに、気づかぬわけはないだろう。 また韓国メーカーとの決定的な相違点として、同国政府レベルで事業者によるインセンティブ制の禁止措置が採られていたのに対し、日本では行政サイドでインセンティブ制を当初から問題視していたものの、国情の違いもあってインセンティブ制を前提にした国内事業者のビジネスモデルには、口が出せなかったということも挙げられる。 国内外市場共に、まっとうなBtoCマーケティングを行う必要のあった韓国メーカーが、グローバル市場で徐々に力をつけていったのには、それなりの道理があるというものであろう。韓国市場が概ね日本の半分という規模であれば、同国メーカーによる海外に向けた力の注ぎ込みようや必死さが、日本メーカーのそれを数段上回っていたことは、容易に察せられるのである。このような点においても、彼我の差が見てとれよう。 ②国内メーカーに欠落する市場予測力 国内メーカーがマーケット・インの能力に欠如していることの証左に、いくつかの国内メーカーが年初もしくは年度当初に業績予想の前提として示す、出荷台数や平均価格といった世界の携帯電話市場の見通しが、現実から大きく乖離していることも挙げられる。 市場が未発達で、予見性が不透明なW-CDMA端末の予測が外れるのは、やむを得ないにせよ、世界的にここ数年進行している、有力各社の規模拡大競争と結果としての出荷台数の大幅な増加、そして出荷数のトレードオフとしての急速な単価下落を事業戦略に織り込めていなければ、そもそも商品競争力以前の問題として、海外での販売競争に勝てる見込みは薄い。 一例を挙げれば、パナソニックが2004年初頭に出した目標である「販売1兆円・4000万台、世界シェア8%以上」からは、世界の総出荷台数5億台という想定が導ける。しかし、2006年の出荷台数が9億台にも達するともみられる現在の趨勢との乖離は、あまりに大きい。 また、同社としての平均販売単価は、2.5万円に設定されているが、グローバルトップメーカーの平均単価が概ね1万円台前半、中~高価格帯機種に特化しているサムスンでも平均単価が、2万円弱でしかも下落傾向となっていることを踏まえれば、世界市場における価格水準と、その前提となる競争環境を大幅に読み違えている。 ③力量不足感否めない市場リスクへの対応 市場予測は、優秀な専門家であっても大なり小なり誤差を生じる。実際、2005年の出荷台数が8億台近い水準に達すると見たメーカーは年初なかった。 そこでメーカーの実力を分けるのが、市場リスクへの対応力――すなわち市場の動きが当初想定と異なる時、いかに適切かつ早期に商品ポートフォリオや販売方針を修正できるかという点である。そうした点にこそ、「公共事業型=BtoB」ビジネスに浸った国内メーカーと、自由競争のなかで生死を賭してマーケティングを行うグローバルメーカーとの実力差が、顕著に現れる。 例えば、ノキアが2004年第1四半期にシェア・業績を大きく低下させた「ノキア・ショック」の後とった対策、そしてその結果としてのシェア・業績回復は、リスク対応力という意味での同社の実力をよく現している(図表9)。ノキア・ショックの原因は、従来の音声端末の時代から、マルチメディア端末に需要が移行していることへの対応が遅れ、折りたたみ端末やカメラつき・高精細液晶つきの高機能端末のラインナップが、十分に揃わなかったことにあった。 図表9 ノキア・ショック前後のノキア端末事業の業績・世界シェアの推移 出典:ノキア、ガートナー だがノキアは、その後自らの課題を直視し、短期的には得意の中・低価格機種で価格競争を仕掛けることでシェアを維持し、ライバルメーカーの体力を奪うと同時に、課題となっていた商品企画・開発体制の見直しを急いだ。その結果、短期間のうちにシェアと営業利益を前年比プラス基調に乗せると同時に、最大の脅威となっていたサムスンの進撃を食い止め、逆に第4位メーカーであったシーメンスを撤退(台湾メーカーBenQへの売却)に追い込むなど、わずか1年で競争ポジションをほぼ回復するに至っている。 ノキアだけでなくモトローラやサムスンなど、有力なグローバルトップメーカーのいずれにおいても、市場リスクに対する強靭さが、真の底力として備わっている。彼らが年間数十~100機種以上にも及ぶ、多彩なモデルを投入することには、単に機種のバリエーションを広げ、全体として規模を出すためばかりでなく、需要が当初想定からずれた時、"大負け"するリスクを最小限に抑えるメリットがある。 そして、ひとたび有望な商品が生まれれば、それを柔軟かつスケーラブルな生産体制のもとで一気に市場投入し、持ち前の販売力で大量に売り捌き、売れ筋商品からの収益を極大化する。こうした「稼げる商品で徹底的に稼ぐ」仕組みが作れない限り、グローバルメーカー並みの利益率(ノキア・モトローラ・サムスンの3強は営業利益率10%超、LG・ソニーエリクソンでも5%以上)を実現することは、不可能だろう(図表10)。 図表10 海外メーカー・国内メーカーの端末事業の売上・営業利益率比較 出典:情報流通ビジネス研究所 またモトローラやサムスンに言えることであるが、グローバルメーカーが無線通信規格でいえば、GSM/GPRS/EDGE、W-CDMA、CDMAからIEEE(WiFi/WiMax/WiBro等)まで、そして組込ソフトウェアで言えばSymbian、Windows Mobile、Linuxまで、固定費的な投資をかけてまで敢えて複数の基盤技術に対応した商品を出し続けるのも、端末のバリエーションに持たせるのと同じ理由、すなわち将来に向けた技術トレンド変化への「リスク対応力」を備えておくためだと考えられる。 翻って国内メーカーの戦略に立ち戻れば、W-CDMAやLinux OSなど特定の技術にコミットすることや、高機能端末に特化することは、一見「選択と集中」に基づく効率的な経営に映る。しかし実のところは、シナリオと実需がかみ合わなかった時の代替策が全く存在しない、危険性の高い選択なのである。 こうしたことからすると、パナソニックやNECが主張する「海外GSM事業から"一時的に"撤退し、国内W-CDMAに特化しながら再進出の時を待つ」という戦略は、もし本当に将来の海外事業再拡大を目論んでいるとすれば、おそらく最も目指す姿から逆行する選択肢――と、あながちいえなくもない。 これはあくまで喩えであるが、今後万が一セルラー系技術のW-CDMAを席巻し、IEEE系の通信技術が世界の主流になった場合に備えた万全の対応策を、国内メーカーは用意できるのかといった懸念が残るのである。 (2)ソフト開発・検証工程での事業者依存の弊害 ①顕在化するソフトウェア費用の爆発的増加 国内端末メーカーが再生を目指す上で、マーケティング戦略と並んで抜本的な対応が求められるのが端末の高機能化・複合機能化によって加速度的に進む組込ソフトウェアの開発規模拡大に対する抜本的な対策である。 図表11でACCESS社が指摘するように、最近の携帯電話端末の単価上昇を招いている最大の要因は、ハードウェア部材のコストでも3Gのチップセットのコストでもなく、組込ソフトウェアのコスト、中でも動作検証のコストである。 この数年、国内携帯電話端末メーカーにおいて、組込ソフトウェアは鬼門であり続けてきた。かつてPMC(P503i)やソニー(SO503i)がJava対応端末におけるバグ改修で多額の損失を出したのに始まり、最近では三菱電機(D900i)の市場投入が商品発表から半年以上も遅れたことなどは全て、組込ソフトウェアのデバッグがうまくいかなかったことが原因である。 図表11 携帯電話端末における組込ソフトウェア費用の高騰 出典:ACCESS資料 ②"焼け石に水"の事業者のプラットフォーム戦略もちろんソフトウェア開発・検証の効率性向上という課題は、すでに関係者には強く認識されるところになっており、ドコモはSymbian OSとLinux OSの2OSをベースに、KDDIはBREWをベースに、キャリア独自のカスタマイズを加えたソフトウェア・プラットフォーム規格を策定、動作検証プロセスの共通化・省力化を図ろうとしている(図表12および図表13)。 ただ、個々の国内キャリアごと、すなわちドコモの場合2プラットフォームで年間2500万、KDDIの場合年間1200万台程度の規模に限定された形で、ソフトウェアの共通プラットフォーム化を進めるという枠組みにとどまる限り、国内メーカーがグローバルメーカーとの厳然たるコスト競争力の格差を縮めることは、難しいだろう。 ノキアは、スマートフォン/高機能端末のプラットフォームをSymbian OS+Series60ミドルウェアベースに統一し、「Nokia 6630」(日本ではボーダフォンの「702NK」)の場合で累計数千万台~1億台におよぶ規模で製造・販売を行っている。これでは、1機種あたりの製造規模が数十~百万台規模で、キャリアの機能高度化・複合化要求に応えざるを得ず、毎機種ごとに莫大なカスタマイズ負担を強いられている国内メーカーと、単純計算でもソフトウェア・コストが2桁違うことになってしまう。 このままでは、独自プラットフォームというキャリアの参入障壁に守られた国内市場ならともかく、海外市場においてW-CDMAが本格的に伸びる時期に、"日本市場での実績"を生かして海外への捲土重来を図ったところで、価格競争を勝ち抜ける公算は、残念ながら今のところ絶望的なのである。 図表12 NTTドコモのソフトウェア・プラットフォーム戦略 出典:NTTドコモ資料 図表13 KDDIのソフトウェア・プラットフォーム戦略 出典:KDDI資料 ③キャリアの独善的ソフトウェア戦略は維持困難に携帯電話端末においては、かつて端末メーカー個々が独自に開発していたプラットフォーム、すなわちチップおよびOS・基幹ソフトウェアの汎用化・共通化が始まっている。この動きの帰結として、パソコンでかつてインテル+ウインドウズという、共通プラットフォームへのシェア集中が起きた歴史が、携帯電話端末においても起きるとの向きがある。 国内キャリアが組込ソフトウェアのプラットフォーム化を主導する大きな理由のひとつにも、携帯電話端末開発の要を掌握しておきたい動機と思惑が透けて見える。 ただし、パソコン向けのソフトウェア/サービス業界では、ソフトウェアの全てを支配するかに思われたマイクロソフトのビジネスモデルが、本格的なインターネット時代の到来によって綻びを見せ、今ではWebサービスの王者たるGoogle社の繰り出すオープン・コミュニティ型のサービス開発戦略に、イニシアチブを奪われている。 こうした状況から類推すると、今後携帯電話端末の組込ソフトの盛衰は、ソフトウェアベンダー製品自身のスペック以上に、提携するサードパーティ・コミュニティの量的・質的充実を生み出す、自律的なメカニズムをどう作り出せるか――がポイントになってくるだろう。 換言するならば、来たるべきユビキタス・ネットワークの時代においては、アプリケーションやサービスの進化を牽引するプレーヤーが分散し、特定キャリアが組込ソフトウェアやその上のアプリケーションを規定するという、「囲い込みの思想」に基づく開発環境の枠組み自体が、早晩成り立たなくなるものと思われる。 将来のユビキタス・ネットワーク時代において、世界に通用するソフトウェア基盤の構築を図るためには、主体がキャリアか端末メーカーかは問わず、特定の1社の判断によってOSや組込アプリケーションソフトを独自に高付加価値化していく発想ではなく、プラットフォーム部分は可能な限り軽量化とオープン化を図り、幅広く外部のソフトウェア/サービスベンダーに自由度と普遍的な事業機会を与えることが、不可欠になっていくだろう。 ソースコードレベルの深い層まで"独自仕様"に改変された「ドコモ版Symbian」プラットフォーム、「オープンソースを使う」と謳いながらLinuxを使って、ローカルなプラットフォームを築いているだけの「ドコモ版Linux」プラットフォームが、国内メーカー間の開発コスト共通化という応急処置的な命題をクリアした後、次のステージに対応していけるかどうか、強い疑問が投げかけられようとしているのである。 Felicaやワンセグ(ワンセグは事業者自身で選んだ発展形態ではないかもしれない)といった機能追加によって、世界の中で独自路線を歩む日本のプラットフォーム環境、そして自らが今後もモバイル・コンピューティング時代/ユビキタス時代の"主役"であることを信じて疑わない、国内キャリアの独善的思想のなかに、先進技術がいつの間にか旧世代の化石となってしまったISDNよろしく、パラダイム変化の予兆を見出さずにいられない。 そうした"裸の王様"への服従から一刻も早く脱し、次世代を先取りしたビジネスモデルの再定義と再構築を推し進めない限り、国内メーカーにおける端末ビジネスの再生を期待するのは、もはや楽観の域を超えている認識が必要なのである。 3.国内携帯電話端末メーカーの事業再生に向けた展望 (1)前提条件としての"2つの独立" ①国内キャリアと同数レベルまでの「大統合」 これまで日本のキャリアは、端末メーカーに対する矢継ぎ早の機能高度化要求、そして過剰なまでの品質保証要求を行い、端末メーカーに多大な開発負担を強いながらも、国際的に見て異例の価格と規模での調達を安定的に行うことで、納入メーカーを自らの支配下につなぎとめてきた。 しかしMNPの開始や新規事業者の参入、今後本格化するMVNOといったコンペチターの登場と増加によって、余裕を失うと予想される既存キャリアが、今後メーカーの収益に配慮した温情的配慮な舵取りを継続させていくことは、もはや期待できないものと考えられる。 少なくともNTTドコモとKDDIは、独自のソフトウェア・プラットフォーム化により、コスト競争に敗れたメーカーの退出と、その代替としての新規メーカーの受け入れを、大きな犠牲を伴うことなく行える体制を整えている。このまま行けば、国内メーカーが先の見えない競争に、足元をすくわれる覚悟を要求され続けられる光景は、容易に想像できる。 座して死を待つのも、ひとつの道かもしれない。しかし現状を拒むのであれば、もはや抜本的な構造改革を回避することはできないだろう。まずは、キャリアとの間の力関係を根底から覆す、戦略的施策が必要である。具体的には、大胆な事業統合によるメーカーの集約が不可欠といえよう。例えば、国内メーカーの視点に立った再編の枠外にあるソニーエリクソンと、もう1~2社くらいにまで統合・集約するドラスティックな再編が必要――と考えられる。 日本同様、キャリアがサービス高付加価値化を強く志向しながらも、サムスン/LG/パンテックの有力メーカー3社が、自国キャリアに従属しない形で事業展開できている韓国携帯電話業界の例を見ても、あるいはJFEと新日鉄の2陣営への集約を経て、大口ユーザーたる大手自動車メーカー3社に対する交渉力を回復した、日本の鉄鋼業界の例を見ても、発注者と同数もしくはそれ以下の数に受注側勢力を結集することは、業界内の力学を変化させる前提条件なのである。 ②求められる「親会社からの完全独立」 もうひとつ重要な前提条件として、長年国内端末メーカーの再編の必要性が叫ばれながら、それが実現しなかった理由である日本の総合エレクトロニクスメーカーの「グループとしてのシナジー」発想の打破が挙げられる。すなわち、デバイス事業やモバイルインフラ事業などとの、相互の関連性を明確に再定義できず、競争力を失った端末事業に対し、本音ではノンコア事業と認識しながらも、中途半端な状態に温存してしまった、過去の経営スタイルからの決別が必要となるだろう。 シーメンスやアルカテルの撤退によって、グローバルベースの携帯電話端末市場においては「縮小・撤退=企業としての存亡の危機」として、不退転の決意で事業に取り組むメーカーだけが、世界的プレーヤーとして生き残っている(図表14)。前述したように、需要トレンドや技術トレンドの変動リスクが非常に大きい、グローバルな携帯電話端末事業において、スピーディな意思決定や投資リスク許容力は必須である。総合エレクトロニクスメーカーというコングロマリットの一部として、戦略の自由度が制限されることの弊害はあまりに大きい。 今後は、携帯電話端末事業の再編・統合の相手探し、そして再編・統合スキームが具体的に検討・実施されると予想される。しかし、母体メーカーの経営関与を残した中途半端な再編で済ませた結果、さらなる競争環境変化という津波の前に、早くも経営が揺らいでいる半導体業界のそれは、他山の石として眺める必要があるだろう。 図表14 内外メーカーにおける端末事業のグループ戦略上の影響度 出典:情報流通ビジネス研究所 (2)ユビキタス時代に向けた事業の再構築①勝算なきグローバルメーカーへの追随的戦略 先に挙げた国内勢の大統合は、現実に照らせば大胆に映るかもしれないが、国内キャリアおよび端末事業の母体であるエレクトロニクスメーカーからの「二重の依存構造」を変えるための、"きっかけ"としての意義しか実は持たない。つまり、本当の意味での事業再生に向けた"処方箋"にはなり得ないのである。 仮に、国内メーカー12社を全て統合したとしても、年間総出荷台数はせいぜいのところ約6000万台に過ぎず、出荷台数ベースでみても、依然としてノキアやモトローラ、サムスンより規模は小さい。そして何より、前節で述べた独自のマーケティング力の乏しさや、ソフトウェア開発における発想の古さという本来的なウィークポイントには、何の変化もない。 国内キャリアからの受託という"公共事業体質"が、10数年来の歴史を経て、もはや体の隅々まで染み渡った国内メーカーが、従来の体質とは全く逆の大衆消費財(コモディティ)事業として、携帯電話端末事業を位置付け、ブランディングやグローバルな開発・生産体制、リージョンごとにローカライズされた販売チャネルなど、全ての面で規模の強みを磨き上げてきたグローバルトップメーカーと伍して戦うこと自体、もはや難しい状態といえるだろう。 ②「脱携帯電話」「ユビキタス端末」に一筋の光明 こうした行き詰まりから脱却する唯一の打ち手は、現在の「モバイルビジネス」が「ユビキタスビジネス」へと向かうパラダイムシフトを予見し、ノキアをはじめとする有力な携帯電話端末メーカーが不得意とするビジネスモデルや領域において、いち早く橋頭堡を築くことだと考えられる。 具体的には、いってみれば単なる音声通信手段として始まった移動機の上に、各種データ通信にかかわる機能を重畳し、合計で月額7000円程度のARPUを稼ぐための道具として、モバイル機器を位置付ける通信事業者の立ち位置からのコンセプトを、いったん全て払拭し切ることである。 そして、携帯電話端末だけでなく、カーエレクトロニクスや家庭内/ポータブル機器といったAV領域までを取り込む、いわゆる「ユビキタス・コンピューティング」を実現するための、多様な通信手段のなかの単なる一手段として移動通信/無線通信を見直し、単機能や用途特化型のハードウェアを中心に、自らの事業領域を再定義していくことがブレークスルーのカギになっていくだろう。 これを簡単に言ってしまえば、「常に持ち歩くもの」というパーソナル性を拠りどころとした、携帯電話事業者の"ケータイ万能"思想や"十徳ナイフ"的な商品コンセプトに、付き合わされることとの決別をも意味している。 デジタル家電を強みとするメーカーにとっては、それが自らのグループとしての成長に直結する。また、それ以外のメーカーにとっては、携帯電話メーカー以外のハードウェアメーカーを、アライアンスパートナーとして有効活用する選択肢が生まれる。海外勢ではアップルやデル・HP、国内勢では任天堂やエプソン、キヤノンなど、それぞれが強みを持つハードウェアに、通信機能をつけることで創造されるビジネスチャンスは数多くあるはずである。 さらに発想を飛躍させれば、これまで無線通信とは無縁と考えられてきたハードウェア、例えば雑誌やぬいぐるみ、ランドセル、自動販売機など、通信機能を取り入れた商品企画・開発を行うことで、新たな価値が生まれる可能性のあるハードウェアは、無数にある。 こうした「ユビキタス」型の基本思想に基づくビジネスを花開かせる上では、ハードウェア側のマーケティング努力と、MVNOといった企業プレーヤー推進などによって多様なネットワーク機器を生かす、サービス側のマーケティング努力が車の両輪としてかみ合う必要がある。 単に「携帯電話キャリア」と「携帯電話端末メーカー」という、旧来から脈々と続いた両者間の関係性そのままの視点でなく、「ユビキタス時代のオペレータ(MNO+MVNO)」と「ユビキタス・ハードウェアベンダー」といった、新たなスキームの構築とその上に立つ事業の創造――という視座に立った、ハードウェアビジネスの再編論が期待されるところである。(了) ※初出・情報流通ビジネス研究所「モバイルインターネット要覧2006」第1章-3・崖っぷちの国内端末メーカーと生き残りの方策・2006年3月 ※掲載データや社名等の表記はいずれも当時のまま [コラム関連記事]
|