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特集「モバイル・ソーシャル」プラットフォームの今後(第1回)(2011/05/23)
Facebookは、米国で今や「一強」と目されるまでに突出した存在に成長した。しかし、かたや日本では、Facebookに最も近い特徴を持つ mixiが伸び悩み、モバイルでモバゲーやGREEが躍進を果たしている。またTwitterは、スマートフォンを使いこなすITリテラシーの高いユーザーが中心ながら、SNSの新興勢力として世界的に急速に台頭してきた。

(1)SNSの今後の進化形

顕在化してきたバーチャルなソーシャルグラフ

これら3グループのSNSは、ソーシャルグラフの構造に大きな差異がある。注目したいのは、リアルな人間関係や階層構造に基づいており、人間関係の前提として信頼や親近感が不可欠なFacebookと対照的に、後発のSNSであるモバゲー・GREEやTwitterが人間関係の構築・更新がより気楽に出来るバーチャル性を採り入れて急成長してきたことである。

また、リアルなソーシャルグラフに基づくFacebookにおいても、その上のアプリケーションレベルでは、ゲーム・イベントだけでつながる友達からなるバーチャルなソーシャルグラフが発達してきている。リアルなソーシャルグラフは濃密なコミュニケーションを生む基盤として重要であることに疑いはない。

しかし一方で、リアルの人間関係そのもののソーシャルグラフでの情報発信・情報利用には、時に衆人環視の窮屈さが感じられることも事実である。その間隙を衝いて、より気軽に参画でき人格や人間関係の更新・再構築の自由度が高い、バーチャル・テンポラリーな要素を加えたソーシャルネットワークへのニーズが、ここにきて顕在化し始めていると理解される。

単一SNSプラットフォームへの収斂には限界

先述したように、モバイル・ソーシャルアプリの多様化が進む過程においては、TPOの限定性(今だけ/ここだけ/イベントの参加者だけ)を「煽り」の要素として取り込んだソーシャルサービスが、ゲーム以外の分野でも次々と立ち上がっていくものと思われる。

例えば、同じ場所に居合わせた人同士で一時的なソーシャルネットワークを構成し、相互のコミュニケーションからイベント集客や来店促進等のアプリケーションへと展開していく可能性が考えられよう。その場合ユーザーからは、アプリ毎にソーシャルグラフ(含むライフログ)を使い分けられるような、バーチャル性・テンポラリー性への欲求が強まっていくものと推測される。

例えば、ファッションを話題にしたコミュニケーションにおいては、その場に集まったメンバーとの間のしばしのコミュニケーションには、今いる場所(銀座か神戸か)、お気に入りの服、通っている学校、友達や彼氏の好みまで積極的に情報交換したい――という欲求が生ずる。

その一方、その場が終わった後まで彼らとの人間関係が続くことは、避けたいというニーズが往々にしてあるだろう。またファッションイベントの場では、自宅や近所でお気に入りの普段着で過ごす日常の自分とは違う「ハレ」の自分を演出したい、というのも自然な感じ方である。

単一のSNSの内部で、ソーシャルグラフをTPOに応じて柔軟に最適化することは、全ての情報を我が元に独占しようとする欲望を抱くFacebookやGoogleに言わせれば、技術的に可能かもしれない。また、SNSを利用するSAP側から見ると、単一SNSの方が、開発面でのワンストップのメリットはあろう。

しかし、アプリケーションの個別性への要求が強まり、遠心力が働くなかで、単一のSNSプラットフォーム上にソーシャルグラフが収斂することのメリットが、本当にユーザーにとってあるのだろうか。むしろアプリケーションの性格に応じて、いくつかのSNSがユーザーの選択によって使い分けられ、それ毎に登録されるソーシャルグラフも異なるというのが、より自然な発展形態のように思われる。

従って今後は、特徴の異なるSNSが並存し、斬り口によって競合と協調・連携が混在するような、業界構造が構築されていく方向にあるものと予想される。

facebook/mixiは市場の支配者か?単なる土管か?

mixiが自らを「ソーシャルグラフ・プロバイダ」と位置づけ、ヤフージャパンや楽天、モバゲー、Zynga等、幅広いサードパーティー(SAP)のコミュニケーションを、「mixi Graph API」や「mixi Plug-in」を通じて支援するという、SAPとの水平分業戦略が明確になった。

これは、かつてのMicrosfoft(ブラウザ)やGoogle(検索)のように、ソーシャルコミュニケーションでネット上のトラフィックの根元を押さえるOS的な機能を狙う、facebook型の戦略である。Mixiが facebookを仮想敵と想定し、全面対決に出る構図が明確になった――とみることもできよう。

では、これからの本格的なソーシャル時代において、mixiあるいはfacebookにインターネット業界の競争軸が収斂していくのであろうか。

検索からソーシャル時代への世代交代は起きるということを前提としても、mixiやfacebookが支配者となるシナリオには、疑問の余地も少なくない。mixiやfacebookの立ち位置は、ネット企業から見たときのNTT本体(固定部門)、換言すれば「土管」に近く、NTTの携帯電話部門である「ドコモ」(かつては、モバイルCPからみて市場の創造主)のレベルにまで、その影響力は達していないというイメージである。

facebookの場合でさえ、ソーシャルゲームでいえばZynga、リアルタイムコミュニケーションでいえばTwitter等、facebookからみれば「アプリ」である各社の存在感は、日を追うごとに高まっている。特に、今回のmixiの座組みで言えば、力関係の逆転構造は最初から鮮明であり、モバゲーをはじめ、ヤフーや楽天等の相対的な力は非常に大きい。

もちろん、連携機能を通じてfacebookもしくはmixiに個人のログが今後加速度的に集積されていく、つまりストックとしてのソーシャルグラフがfacebookもしくはmixiに集中することは決して否定できない。

しかし実際の利活用、すなわち会員間のコミュニケーション・インタラクション、そしてトランザクション(マネーフロー)を生み出す主導権は、すでに今SAPが握りつつある。今後リアルタイム・ロケーションベース等、TPOに応じたコミュニケーションが本格化するなかにおいて、ソーシャルグラフ運用の主導権がますますSAP側に移るという、「軒先を貸して母屋を取られる」構図になると考えるのが、世界的に見ても自然だということができる。

「人とのつながり」から「情報価値のつながり」へ

SNSという新たな情報流通インフラはマスメディア、とりわけ電波利権を持つTVを頂点とする、従来型の情報流通インフラとは違い、誰もが情報の発信者及び伝達者になれる自由と機会の平等が存在するという意味では、民主的な装いの強いインフラである。

しかしこれまで繰り返してきた通り、ソーシャルグラフ上のコミュニケーション・インタラクションを活性化させる浮揚力の一翼が、人間同士の「格差意識」にある以上、結局のところは格差の上位にある一部のメンバー――すなわち社会的ステータスや対人関係構築力が高く、情報収集力・表現力に優れた人間――が情報流通の上流に君臨することになる。

他方、それ以外の下層のメンバーが、仮に単発的に優れた情報を発信したとしてもすぐに広がることはない。すなわちソーシャルネットワークの、「価値ある情報」が影響力を広げる流通インフラと言うより、「影響力の強いメンバーが発する情報」が広く流通するインフラであるという本質は、既存マスメディアの構造と根本的には変わるものではない。

その限りにおいては、下層階級には受動的意識や疎外感が生まれやすくなり、コミュニケーション・インタラクションを活性化するもう一方の浮揚力としての「連帯意識」の向上が、一定の上限レベルで頭打ちとなることは避けられない。これが、現在のソーシャルネットワークという情報流通インフラの限界――といえそうである。

こうした限界を乗り越えるためには、その時々のテーマに応じて参加者や参加者間の情報流通経路が動的に構築され、有益で価値ある情報が誰から発信されたとしてもスムーズに流れ、それに関心を持つであろう人々に伝わり話題のきっかけとなっていくような、よりスマートでユーザーフレンドリーなネットワークへの進化が今後求められるようになってくると思われる。

言わば、「人」をつなぐネットワークから、「情報価値」をつなぐネットワークへの進化である。前述したバーチャル・テンポラリーなソーシャルグラフの発生は、そうした新たな情報流通基盤への渇望の発露とも読めるだろう。(次回に続く)
(文/情報流通ビジネス研究所 SNS・ソーシャルアプリG+梶村  徹)

※本記事は、情報流通ビジネス研究所発行レポートの内容を不定期で掲載しているものです。同分野における経営企画や事業戦略、サービス企画等に携わる方々には、「モバイルSNS/ソーシャルアプリの事業分析と市場規模予測」(コンプリート版)のご活用をお勧めします。

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